水面に甘く溶ける角砂糖
4.[ A magician's trick](1/531)
 *牛田 梢 × 大崎 郁弥 編



この光景は私にとって
もう、見慣れた光景の一つ

そして…

「…ンッぁ」

ここでこうして過ごす事も
特別、珍しい事でもなく

ゆっくりと口内を探られ
ゆっくり舌を吸い上げられ

「アッ…」

こんな声を漏らしたのも
もう、何度目か分からないくらい

ここで愛を深める時間を
度々、過ごしてきた

ただ、重なっていた唇が離れて
熱帯びた視線が重なった後に

「で?次は?」

こう言われるのは初と言いますか
いや、初で間違いない

「………」

この部屋に入ってすぐ
私が取った行動は

自分から彼にキスをする
このいつもとは違った

立場逆転の行動

そして、キスをした後の事を
こうして向き合った彼に聞かれ

「……次は」

土壇場になって焦る私を

「こっちゃんが自分で言ったんだろ?」

見透かしたように彼がこう言い
その目はジッと私の動きを追っている

「そう…だけど」

確かに…

《今日は、私が郁弥くんを気持ちよくさせるから》

そう…言ったのは私だけど

普段から出来ない奴が
背伸びをするとこうなる

と言う事をそのまんま
立証しているようなもので

「じゃ…自分で脱いで。俺に…見せて」

彼にこんな催促をされて
心臓はドキドキと鳴りっぱなし

彼と付き合い始めてから
初めての夏を彼と一緒に迎えていた

そして、彼との関係が
濃い物へと変わってから

もう…こうして彼とは
何度も触れ合ってきたのだけど

今日は、いつもとは様子が違い
と言うかこうなったのは私が原因…

いや、私が原因なのか?
あれは不可抗力じゃんかっ

と言いたい所だけど
彼のこんな時に見せるSっ気が

堪らく好きな私にとって
不可抗力を主張するよりも

彼に…支配される時間を選ぶ
この選択をしたのは他の誰でもなく

この私で間違いない

この選択をするのだって
彼の根底にある基盤が

自分の存在をアピる為でも
全ての事に於いて私を支配する

と言う事では全くなく

常に彼から伝わるのは
大切に愛でられてる

これのみ

だからこそ…彼が
この時間だけに見せる

独占欲的な行動も
綺麗な形となって

私の目に映り込む

「俺に指示されないと出来ない?」

「そ、んな事ないし。出来るし」

「ん…。じゃ、早く脱いで」

ムキになる私を見て
ふっと笑う彼の様子から

彼の強制的な意図は
ここには見当たらない

全て私が言い出した事に
彼が付き合ってくれている

そう言った方が正しい

そもそもこんな事態になったのも
遡る事、数時間前のあの時間から

全ては始まる事になり

こんな事になるとは
当の私も思ってもなくて

大体…こうなってるのは
あいつのせいだよあいつの!!と

私を仰天させたあの時間へと
また、記憶が巻き戻っていた


A magician's trick




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